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文明

覚え書き

文明とは何だろう。
そもそも定義が甘い。
というより、誰か定義しているのか?
これは「なんとなく概念」だろう。
何となく流通していて、何となく共有された定義がある、ようなないような。
そんな曖昧なもの、無視して酔い。
いや、しかし、文明と呼ばなければならないもの、現象があることも事実。
それが何か見極める必要があるし、それこそが文明と呼ばれるべきものだろう。

文明に近い概念で、より後半に使われる文化という言葉がある。
いずれも漢語(明六社あたりでつくったのだろう)では、「文」という文字が入る。
漢字文化圏では文、そして漢籍、これが文明文化を象徴し、また確かに主観的に解釈してきたものであっただろう。
しかし、もちろん今日では文字を文化の基準にはしない。
インカは文字を持たず、キープと呼ぶひもの結び目で情報を伝えた。
さらに、文様や口承、神話や構築物、服飾などなど、文字ならぬものに文化文明を伝えたものも多かった。

文化の相対性を前提するならば、文、文字は特殊なものであろう。
確かに文字は正確に大量に情報を伝達し、蓄積するのに優秀である。
しかし、伝えられるものが重要なのであり、たとえば今日の情報の氾濫を見て、それを文化そのものだと認めるものはない。
ではなにが文化で分明なのだろうか。

文化は今日最も広い解釈を必要としている。
もちろん文化の多様性の是認を前提するならば、である。
すなわち、文化とは人間の生きる生き方、である。
生きることが、直ちに文化、というとたしかに曖昧になる。
しかし、人間は野生動物ではなく、環境に対し社会を形成し順応する。そして、さらに、社会の内部に社会的な組織の維持を円滑ならしめる、個体間のコミュニケーションを成立させる。
社会を形成する動物は数多いが(シロアリからチンパンジーまで)、人間は明らかに諸集団間の社会の形成、個体間の関係に関わる行動様式に差異を認めねばならないという点において、他の動物と異なる。
つまり、動物の社会は、具体的な有り様はその集団の偶然的な環境によるが、その社会形成の様式はほぼ一定であろう。しかし、人間においてはそれは明らかに異なっている。
人間は、やはり「文化」とよべる、生の様式を必ず持つのである。
そしてこの様式なくして人間は存在し得ない。

こう考えるならば、文化は人間の生きる社会には必ず認められると言うことになる。
それがもし、絶海の孤島における、数十人の集団であってもである。
だが、文明には同じ事を言うことが出来ない。
文明は数十人の村に存在すると言うことは出来ないし、言われたこともないだろう。
文明はある一定以上の規模の社会集団を必要とする。
いや、明らかに大規模なものについて「文明」という語が使われるのである。

では、偶然に多くの人間が社会を形成していた場合にもこの語を使用できるだろうか。
だが、実際には逆であろう。
文明が大規模な社会を可能にし、また、大規模な社会が成立して初めて文明が生まれる。
このことは同時に相互的なのである。

すると、この「文明」には、巨大な社会を形成していく力があり、また同時に大規模な社会に依存するものでもあるのだ。
どちらが先か、鶏か卵か。
それは重要ではない。

文明は大人数を養うだけの生産力を持つ集団であり、かつ、それを可能にした技術、知識、社会組織こそが「文明」の指すところではないだろうか。
この生産の能力により大規模な社会が生存可能となる。
一方でその大規模な社会集団と、その拡大により、はじめて生産能力の維持拡大が可能である。
これは相互的な関係なのだ。

しかし、これは単なる機能的なメカニズムだけにとどまるものであろうか。
たしかに、食料など物質の生産という面に関して文明という概念がより重要な意味を持つことは確かであるが、そのような社会組織を形成し、そのような生産に関わるのは人間である。
何も考えず、ただ状況の中で行為するということはあり得ない。
であれば、「文明」なるものを人間に形成させしめる何らかのものがあって、支えていなければならないと言うことになるのではないだろうか。

文化は何の条件もない、人間の生の形式である。
それに対して文明は、人間に巨大な社会の組織、拡大と生産という条件を課す。
この条件を満たさないものは、大きな影響を与えることは出来ない。
なぜならば、社会組織の拡大、あるいは組織化の拡大によって、その生の様式の影響があるとかんがえるならば、つまり、社会組織を拡大する仕組みである「文明」こそそれであるからだ。

我々が地球上の何らかの文明に属していることは確かである。
確かに我々は地球表面上を覆い尽くす「人類社会」を形成し、これを前提に生産を増大し続けている。
過去にさかのぼっても、古代より日本列島を覆う社会の形成があり、生産も増大させていった。そう、農業である。
我々の記憶にある限り、我が国は常に文明のうちにあり、その力の影響を受けてきた。
我々は文明を前提としているのである。

物質生産の増大は社会組織のさらなる巨大化を許す。
その巨大化した社会が更に多くの生産をもたらす。
この拡大の過程で、拡大の速度に応じて一時的な余剰が発生する。
もちろん、継続的に拡大していくならば余剰も継続である。
それこそが我々が手にしている富である。

ところが、その拡大が不可能になったとき何が起こるか。
拡大、増大の停止ではなく、崩壊である。
これは過去の巨大文明が身を以て示している。
そこには必ず環境破壊の問題が存在する。

しかし現代文明はそのような過去の教訓を自覚し、いや、現在自分たちのある状況を理解し、まえもってそのような崩壊を回避できるかもしれない。
たしかに、この文章自体それである。
今日我々は試されているのである。

文明自身にはこの拡大を止める様な機能も力も可能性もない。
文明の提供するシステムのうちにある限り、崩壊は確実なのである。
しかし、その文明を形成するのは人間であり、この人間がいかに考え行動するかによりその可能性が生まれるのだ。

ここで重要なのは、人間をして文明を形成せしめる際にうちから支えたであろう、その文明に特殊な、文明形成に力となる「文化」、人間の生の形式、あるいは端的に思想が、どのようなものであったかである。
我々も当然その思想のうちに生きてある。
その制約を突破できないようであれば答えは悲観的である。
一方、これに対抗し得るのであるならば、可能性はある。いずれであろうか。

滅んだ過去の文明はさておき、まず、我々は我々自身の文明について考察しなければないであろう。
ただし、これは極めて特殊な文明である。
これは地球の全表面に及ぶまでに増大した唯一と考えられる文明なのだ。
過去の文明が突き当たった壁を越えるシステムが、このうち二は認められるだろう。

この特殊な特徴と、それに由来する人間の特殊な生の様式、思想、その解明が第一であり、それによって、これに対抗し得るすべも見つかるはずである。
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by lebendig | 2006-02-07 02:35

寒い「教育」

この時期、業界的にはいろいろルーチンではない仕事が増えまして。
まぁ、言い訳ですが。
しかし、思索を巡らすというようなことは、他の様々な仕事と一緒に、細切れにやったりは出来ないもので、暇があっても何も進まない。
いってみれば、この時期の些末な様々な仕事というのは、「教育」に必然的伴われるものであるから、哲学と教育は相性が悪いと言うことになる。
いや、必ずしもそうではない。
手続き化された「教育」と相性が悪いのである。

今日の教育システムは、まさに手続きとして成り立っている。
中身というか内容というか、つまり人格のうちに実現されるもの、これは今日全く問題になっていない。
結局、人格の育成は今日の教育システムの目的では全くない。
そして、思索は人格と不可分のものである。
つまり、哲学は今日の教育の中では成立しない。
というか、今日の「教育」は教育ではない。
教育とは人間を導き育てることであり、ただ養殖するようなものではないことは当たり前である。
すると当然、何を目指すのかが問題となる。
目指すべき人間像、これが教育において最も重要だ。当たり前であるが。
そしてこれは、教師自身でさえも尊敬すべきようなすばらしい人間であるべきだ。

ところが、本当に情けない最近の教師は、自分みたいに教育するのが最高だと思いこんでいる。
なさけない。
自分の受けたつまらない教育を、自分が教育するときのモデルとするのである。
そんなことをすれば、つまらない人間の、さらにその出来損ないが再生産されていくことになる。
いや、どんどん悪くなる。
今現在、我が国には尊敬すべき様な人格などほとんどない。
無理に尊敬しようとする場合はあるかもしれない。
しかし、真に目標とすべき様な人格とは、有無を言わさず尊敬してしまうような人格なのである。
そんなものいないので、そんなことも忘れてしまっているのだ。

自分の受けた教育をモデルにするということは、自分みたいな人間を生産することを教育目標とするということ。
つまり、自分はすばらしい、と思うこと。あー寒い。。。。
教師のやるべきは、自己否定。
自分みたいなのではだめだ、と自覚する人間が、初めて教師になれる。
いや、耐えざる自己否定により、初めて人間は成長できる。
自分ができあがったすばらしい人間だと思いこんでいるようでは、成長は完全に止まっている。

自己を否定する。
幼稚な人間には出来ない。
しかし、今時の教育者は幼稚な人間ばかり。
寒い時代になったものだ。
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by lebendig | 2006-02-06 23:29